季節の刻

吉田 喜彦 展

9月の大黒屋サロン展示は陶芸家の吉田喜彦さんの個展を行ないます。2009年11月以来、大黒屋で2回目となります。


吉田さんは栃木県宇都宮市生まれ、1956年より13年間人間国宝の荒川豊蔵のもとで作陶修業に励みました。

その後1968年に独立して以来、数々の展覧会を行ない、また80年代以降はアメリカ、ヨーロッパでの展覧会にも参加し国内外で高い評価を得ています。

志野、瀬戸黒、灰釉、白化粧などの美濃焼による作品は、伝統を踏まえた品格がありながらも、独特の温かみと静けさを兼ね備えた作品が特徴です。

今回の大黒屋での展示では、代表的な志野茶碗を中心に、瀬戸黒や白化粧といった技法による作品。普段使いの湯呑、酒器等、そして壺、鉢、花入などおよそ80点を展示致します。作陶歴60年近い、吉田さんによる最新作をご堪能頂ければ幸いです。

※ 9月18日(金) 20時からサロンにてアーティストトーク行ないます。


展覧会情報はBlogにて更新しております。

プレスリリース


 

今、想うこと。

現在住んでいるこの土地は、義父が桃源郷のようだと窯の名を桃源窯とつけて下さった程よい所でした。時代とともに変わってしまいました。護る努力をして来ても、この程度に保つのがやっとでした。

数年前リニア中央新幹線が通ると発表され、我が家は数棟の建物、窯、蔵を潰されます。それよりも、桃山時代、一番日本らしい秀れた陶器を生み出した窯跡や、その周辺の自然が変わります。なんでもないような自然でも、日本の昔がこうであっただろうと想像できて、観光地になっていないから貴重なのです。日本の文化をもっと大切にして欲しいと悲しく思う昨今です。

私は七十九才です。もう十年仕事をするつもりです。そのためにも大黒屋の皆さんに会い、静かな空気の中で気力を高めたいと、板室行きを楽しみにしています。

吉田 喜彦




略歴

1936 宇都宮に生まれる
1956 荒川豊蔵のもとで作陶修業をはじめる
1969 築窯、初窯を焚く
1988 「現代日本の陶芸展」出品(ポートランド美術館/アメリカ)
1992 「日本の陶芸 “今”百選展」(NHK主催/パリ)
1995 「JAPANESE STUDIO CRAFTS展」出品(ビクトリア&アルバート美術館/イギリス)
2007 「吉田喜彦・ボードゥアン二人展」(ヴァンヌ/フランス)
2008 サンフランシスコ・アジア美術館にて講演、ワークショップ
      アメリカにてポートランド美術館ほか 講演とワークショップ
2011 アメリカでの講演、ワークショップ、個展
2014 「陶芸家・吉田喜彦展」(世田谷美術館/東京)
2015 「吉田喜彦とうつくしいものたち」(岐阜県現代陶芸美術/岐阜)